学校の早朝開門で「小1の壁」解消へ|保育システムNavi

学校の早朝開門で「小1の壁」解消へ

2024.9.23 保育お役立ちコラム
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小学校に入学した子どもの預け先が見つからず、親が仕事を続けるのが難しくなる「小1の壁」に対する対策として、小学校の開門時間を早める取り組みが広がりつつあります。放課後の対策は学童保育などで進められてきましたが、朝の時間帯に関しては十分な対策が取られていなかったと指摘されています。全国的にこの取り組みが広がることが期待される一方で、いくつかの課題も浮上しています。
(※2024年6月25日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)

早朝登校の導入で広がる働く親の安心感

6月12日午前7時半頃、大阪府豊中市にある市立大池小学校での光景です。大阪市内の金融会社に勤める38歳の女性が、小学1年生の娘と共に小走りで登校していました。勤務が午前8時半から始まるため、通常の登校時間では時短勤務が必要でしたが、この早朝登校のおかげで助かっていると話します。娘を見送った後、女性は近くの駅へ急ぎました。
同じく金融会社に勤める岡室舞さん(40)も、小学3年生の娘を早朝登校に送り出しています。岡室さんは「早く出社できることで仕事がはかどり、早く帰宅して娘と過ごす時間が増えた」と満足しています。

大阪府豊中市の小学校早朝開門対策とその現状

豊中市では、4月から市立小学校全39校で開門時間を1時間早め、午前7時頃に設定しました。これにより、保護者の出勤に合わせて登校する児童が、校門前で長蛇の列を作ることがなくなりました。
登校した児童は、体育館や多目的室で自由時間を過ごしており、見守りは市教育委員会が委託した警備業者によって行われ、各校に2名配置されています。この取り組みにかかる委託料は年間約7100万円です。
市教育委員会によると、この取り組みが始まって2カ月が経過した6月10日までの利用者数は延べ3,154人で、1校あたりの1日平均利用者は2人弱にとどまっています。利用者数は徐々に増加していますが、予想を下回っているとのことです。利用者がゼロだった学校も2校ありました。

早朝登校の低利用率と保護者の付き添いに関する課題

利用が伸び悩んでいる理由の一つとして、保護者に求められる登校時の付き添いが挙げられます。市民からは「通勤で使う駅と学校が逆方向の場合、不便ではないか」との意見も出ています。
しかし、市教育委員会は「安全面を考慮すると、付き添いは必要です。『小1の壁』に悩む保護者にとって、選択肢があることが重要です」と強調しています。今後、6月中にアンケートを実施し、保護者の具体的なニーズを把握していく方針です。

全国に広がる朝の預かり支援とその課題

全国的に広がりを見せる朝の児童預かり支援ですが、神奈川県大磯町では、2016年1月から町内の全2小学校で午前7時15分から学童施設を運営しています。これは県のモデル事業として約2カ月半実施された後、保護者からの好評を受けて継続され、現在では1日平均30人ほどが利用しています。
一方、同じモデル事業に参画した海老名市では、利用登録者が数人にとどまり、本格的な導入には至りませんでした。県の担当者によると、朝の短時間で児童を見守る人材の確保が難しいことが、取り組みが広がらなかった要因とされています。

横浜市の早朝開門モデル事業と共働き世帯の増加によるニーズ

横浜市では、7月から市内の2つの小学校で開門時間を約1時間早めるモデル事業を実施する予定です。この取り組みが広がる背景には、共働き世帯の増加が影響しています。
総務省の調査によれば、昨年の共働き世帯は1,278万世帯に達し、専業主婦世帯(517万世帯)の2倍以上となっています。また、NPO法人「放課後NPOアフタースクール」が昨年、首都圏の母親1,000人を対象に行った調査では、子どもの小学校入学を機に50.7%が「働き方の見直しを検討した」と回答しました。小学校入学前は延長保育で朝早く子どもを預けることができたものの、小学校入学後に預け先がなくなり、働くことを諦めるケースが見られます。

「小1の壁」対策には子どもの安心と企業の働き方改革が不可欠

新潟県立大学の植木信一教授(児童福祉)は、「小1の壁」対策について、親のニーズに応えるだけでなく、子どもたちが安心して過ごせる「居場所」と感じられる環境の質を確保することが重要であると指摘しています。また、企業の働き方改革も同時に進めなければ、この課題の根本的な解決には至らないと述べています。

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