ケンカをチャンスにしよう
毎日の保育の中で必ずと言っていいほど起こるのが子ども同士のケンカです。それは年齢に関係なくどんな時も起こる可能性があり、保育士も気をつけていることと思います。ケンカの対応についてどのように接していますか?成長に合った対応ができているでしょうか。本日はケンカについての対応です。
乳児のケンカ
たとえ0歳であってもケンカは起こりえます。まだおしゃべりのできない赤ちゃんが押し合う姿などはほほえましいものにも見えますが、成長するにつれて噛みつきなどが増えてきます。
乳児はうまく言葉を発することができないため、「噛みつき」「押す」「叩く」などの問題がよくあります。
乳児の場合はまずトラブルにならない環境を整えてあげることが大切です。
できるだけおもちゃの数をそろえたり、遊びの空間を広くとることで無用な衝突を防ぎます。おもちゃの取り合いや、場所の取り合いは大人の配慮が足りなくて起こるものと認識しましょう。「かして」などのやり取りを促すこともありますが、それは大人とのやりとりの中で楽しんでするものです。
0、1、2歳の時期は大人との関わり、環境の整え方でトラブルを防いでいきましょう。
幼児のケンカ
乳児期は、おとなが環境を整えることでトラブルを防ぐことをお話ししました。
では、幼児さんはどうでしょうか。
トラブルが起こらないように環境を整えることは幼児になってもとても大切なことです。しかし、環境を整えていてもケンカは起こります。しかし、それは子どもの発達にとって大切な出来事です。
<ケンカが起きたとき>
ケンカが起きたときすぐそばに駆けつけているでしょうか。
これはどんなケンカのときも同じです。必ずそばに駆け寄りましょう。
すぐに介入する必要はないときもありますが、感情が高ぶると叩いたり、引っ掻いたりすることがあります。手に持っているものが武器になるときもあります。思いがけない事故を防ぐためにも必ず保育士の手が届く距離にいるようにしましょう。
<先入観はもたない>
なぜケンカが起こったのかわからないとき、現場を見ていなかったとき、つい勝手に考えてしまいがちですが一度頭から外してください。
言葉でのケンカが続いている時は言葉をよく聞きます。片方だけが話しているときは、もう片方の子どもからも言葉を引き出します。
子どもが発した言葉以外はこの時に使いません。子どもから出てきた言葉は言葉足らずなことが多いからです。
「これは僕の!」と言っていたら
「僕の何?」と聞きます。
「僕のブロック!」と言ったら
「ブロックをどうしたの?」
と足りない言葉をその子自身の口から言えるように援助をしていきます。
このやり取りをすることは、保育士がケンカの内容を把握するとともに、ケンカをした子ども達に「言葉」で示す方法を教えるための大切なステップです。先入観を持たないことは、子ども自身の言葉を引き出すことに繋がります。
<おうむ返しをつかう>
話をしていくうちにケンカの内容が保育士にも見えてきます。そうなってきたら、子どもの言葉をおうむ返ししましょう。
「僕が使ってたブロック!」→「そうか。A君が使っていたんだね。」
「違う!僕がとっておいたんだ」→「B君はブロックをとっておいたんだね」
おうむ返しをすることで、子どもは自分の意見が保育士に通じたことを感じます。もちろんケンカ相手には伝わっていませんが、第三者である先生がわかってくれたという安心感が生まれます。
この安心感が芽生えることで心の落ち着きを取り戻し、そのあとの相手の話に耳を傾けることができるというステップに進むことができます。
<おうむ返しから通訳へ>
はじめはおうむ返しをしますが、途中からは通訳のように相手に言葉を届けます。
「Aくんが使っていたブロックはBくんが使おうと思ってここに置いておいたんだって」
「Bくんがここに置いていたブロックは、誰も使っていないと思ったんだって」
このときに足りない言葉を補って伝えます。
大切なことは相手にも言い分があるということをなんとなくでも良いので理解させることです。
忙しいときはこの時点で
「B君がとっておいたんだからA君は返してあげなさい」とケンカを終わりにしたくなりますが、実はこの瞬間がとても大切です。
<相手にも気持ちがあると知る>
保育士が間に入りながらも言葉のやり取りをしていくうちに、
「B君は意地悪でとったわけじゃないのかな」
と相手の気持ちを感じられるようになります。ケンカをすることで子どもが体験する
「あの子はこう思っているのかな?」ということが、心の発達にとても大切なことです。
自分の思いと相手の思いは違う形で存在します。自分が置いておいたつもりのブロックも相手には伝わっていなくて、相手も使いたい気持ちだった。
僕が使えると思っていたブロックだけど、実は自分用に取り分けて置いてあるものだった。
それぞれの頭の中にある「思い」と「気持ち」という形のないものに少しずつ気が付いていけるのです。
3歳位であればここまでで充分です。保育士が解決方法を提案してあげましょう。
さらに年齢があがった場合は自分たちで答えを探させることも一つです。
<みんなの意見も聞こう>
ケンカの着地点は必ずしも両成敗とならない場合も多くあります。どちらかが我慢しなければならないときもあります。
保育士も迷う場面があることでしょう。
そんな時は周りの子ども達にも考えてもらいましょう。そのときにどうするべきという聞き方ではなく、どうしたらより良い解決方法になるかということを聞くようにしましょう。
聞き方によっては、答えがどちらかを責めてしまうことになるからです。
大切なことは「こうあるべき」という模範解答ではなく、「今どうしたらよいか」という知恵を出し合うことです。
子ども達は面白い視点で答えてくれます。
・2人一緒にブロックで作ればよい
・そのブロックがなくても作れるものを考えたらよい
・僕のブロックを分けてあげる
・二人とも使いたいなら、二人ともが我慢すればいい
思いつかないような答えを出してくれます。そしてこの周りの子も考えるという行動は、何かがあったときにただの傍観者にならないための経験にもなります。
将来何かが起こったときに一緒に考えることができる子に育ってほしいですね。